2012/10/09

賃料滞納を理由に賃貸建物の明け渡しを求めるには?

賃料滞納を理由に賃貸建物の明け渡しを求めるには?


<質問内容>
Xにマンションの一室を賃貸したYからの質問です。「月額賃料9万3,000円、月額管理費7,000円(賃料等合計10万円)で契約しましたが、この2年間、Xが賃料等を4万円、5万円と分割して不定期に振り込むため、慢性的に支払不足状態が続き困っています。いっそ立ち退きを請求したいのですが、どのような手順を踏めばよいのでしょうか」


事実関係の確認


契約書では、賃料等の支払方法についてどのように定めていますか?

「毎月末日に翌月分の賃料を指定銀行口座に振り込む、としています」

契約条項に、解除に関する特約はありますか?

「賃料等の支払を2ヶ月以上怠ったときは催告なく解除できる」としています。

無催告解除の特約ですね。解除の意思表示はしましたか?

「していません」

話し合いで説得 ► 債務名義の取得

契約の成立後にその契約を解消するには、契約終了の手続きが必要となります。終了原因は、

  • イ. 期間が満了しXが更新を求めない。
  • ロ. XYの合意をもって契約を解除する。
  • ハ. Xの債務不履行によりYが契約解除の意思表示をする。

等があります。本件は”ハ.”のケースですが、Xは解除特約の要件を満たしていますか?

「細かく計算していませんが、常習的に20万~30万円を滞納しています」

「2ヶ月以上」「2ヶ月分以上」は違います。後者は20万円以上ですが、前者はその支払が当該弁済期に遅れること2ヶ月以上という意味です。例えば月初の時点で、滞納額が累計24万円の場合、4万円が「2ヶ月以上の滞納」に該当します。常習的であるならばこの債務不履行による解除は可能です。

「解除の意思表示は口頭でできますか?」

可能ですが、後日争われると立証が難しいため、配達証明付書留郵便(または内容証明郵便。到達を証明するためなので前者で十分)で送付すると良いでしょう。

「解除の郵便が相手に届いたら、契約は自動的に解消しますか?」

契約は終了しますが、賃借人の不動産占有は残ります。この占有を賃貸人が実力で奪還すると禁忌に触れます。法事国家は強制執行を国家(執行官)の専権とするので、自力救済は不法行為に問われます。賃借人の不動産占有を解除する方法は、

  • ① 賃借人が任意に占有を返還する。
  • ② 執行官が賃借人の占有を解いて賃貸人に占有を取得させる(民事執行法168条1項)

の二択で、中間がありません。①に導くために条件を提示したり、話し合いでの説得を試み、②であれば、債務名義(明渡しを命じる判決等裁判書)の取得(裁判の提起)をすることになります。契約条項に解除の特約を欠く場合は、原則に帰り、民法の催告付解除(まず催告し、履行がないときに解除)の手順を踏みます(民法541条)。

押えておきたいキーワード

明渡しのポイントは「賃借人の占有を回収」にあり