2012/11/29

終の住まい、「最後は田舎」派は男性、「最後は都会」派は女性に多く

終の住まい、「最後は田舎」派は男性、「最後は都会」派は女性に多く…ADK調査

「全国一斉 住む力調査」を実施しした(株)アサツー・ディ・ケイ(ADK)は、その調査結果を公表した。
同社は先般、日本女子大学大学院住居学専攻・篠原聡子研究室と共同で、生活者が自分らしい住まいを選択、維持する力を「住み力(すみりょく)」と定義し、これを高める活動を行なう「住み力」プロジェクトを発足。第一弾の活動として今回の調査を実施した。調査は、2012年9月28~30日の期間で全国の20~69歳の男女を対象にインターネットで実施。回収サンプル数は1,376人となっている。

「むこう三軒両隣とは、挨拶する仲でいたい」という人は、60歳代81.2%、50歳代80.6%と年配層にいくほど多く、一方30歳代61.0%、20歳代55.7%と若年層にいくほど少ない結果になった。また、「シェアハウスのように台所やトイレを共用するのは合理的だ」とする回答は、20歳代が35.2%と、全世代の中で最多となり、若年層はシェアハウスのように合理的でかつ新しい人間関係をつくることができる住まいに魅力を感じていることがうかがえる結果となった。

「自分の家に遊びに来た友人が後で自分の家をどう評価するか気になる」という回答は20歳代40.0%、30歳代40.6%と若年層ほど高く、逆に60歳代では17.4%にとどまった。一方で「家に季節の花を飾るなど生活に彩りを添える工夫をしている」という回答は、60歳代が60.1%で、他の世代を大きく引き離してトップ。以下50歳代36.6%、40歳代34.3%と続き、最もその回答が少なかったのが30歳代で27.4%となり、年配層は周りからの評価より自分の内面を整えるために工夫をしていることが分かった。

 
さらに「終の住まい」についての考え方については、「最後は『田舎』で暮らしたい」との回答が、男性60歳代で45.3%、女性60歳代で17.4%と差が顕著に。「最後は『都会』で暮らしたい」との回答も男性60歳代が53.6%、女性60歳代が72.5%という結果となり、田舎に住みたい夫と都会に住みたい妻という構図が見え隠れする結果となった。

なお同社は、同プロジェクトの活動第二弾として、11月18日を「いい家の日」と制定、それに合わせて「住み力」WEBサイトをオープン。サイトにアクセスして「住み力診断」の45の設問に答えると、自分の住み力の高さ(点数)とタイプを知ることができるというもの。結果については、facebookやtwitterを通して友人などと共有することができる。

2012/11/13

ファミリー不動産に着目 親の家住み継ぐ時代へ

ファミリー不動産に着目 親の家住み継ぐ時代へ


 三井不動産リフォームがまとめたレポートによると、両親の家に結婚した子供世帯が同居する一般的パターンに加え、マンションに転居した親の家に子供世帯が移り住むなどの代表的な6つの事例を紹介した。高齢社会と不透明な所得環境を生き抜くためのファミリー不動産(FRE)戦略が注目を集めそうだ。

 祖母が一人で暮らしていた築40年の住まいに、結婚したばかりの孫夫婦が新居として住むことになった事例も紹介された。祖母は高齢者施設に移ることを決断したが、長年暮らした家が空き家となって朽ちていくことだけが心残りだった。そこで、母親が仲介役となり、「壊さないで住み継ぐ」ことを条件に、若い孫夫婦が全面リフォームして新居とすることが決まった。2,000万円以上のリフォーム費用は全額祖母が負担した。投資効率が最優先されるCREと異なり、FREは子や孫に対する愛情、思い出がたくさん詰まった住宅への愛着が大きなウエートを占めるのが特徴だ。

リポートは今後、FRE戦略が脚光を浴びると予測する根拠として

  1. (1)若年層の未婚・晩婚化により「家を持つ」というモチベーションが先延ばしになってくる
  2. (2)団塊ジュニアの約半数が3大都市圏で生活。所得が伸びないとマイホームの取得が経済的に難しい
  3. (3)少子化で親から家を相続する若年世代が増えている

ことなどを挙げている。

 中でも経済的事情は大きい。リポートでは、実際に親の家をリフォームして住み継いだ事例を基に、住宅取得のコスト比較を行っている。それによると、場所は東京23区内の住宅地で、私鉄沿線の駅から徒歩13分という環境。結果は継承+リフォームが2,070万円だったのに対し、中古購入が4,980万円、新築分譲は6,380万円となり、経済的メリットの大きさが浮き彫りとなった。

 最後にリポートは経済的にも、精神的にも豊かになる可能性が高いファミリー不動産の継承だけに贈与・相続税など税務上の対策が重要になると指摘している。例えば親名義の住宅に同居する場合は親がリフォーム資金を出せば贈与にならない。しかも相続時には親の現・預貯金を減らし節税対策になる。反対に親名義の住宅に子が自己資金でリフォームすると、親への贈与となるので注意が必要、などとしている。

2012/11/12

三角屋根住宅、再評価へ調査 寒冷地に適したコンクリ造り 札幌近郊に3500戸

三角屋根住宅、再評価へ調査 寒冷地に適したコンクリ造り 札幌近郊に3500戸

かつては道民の暮らしに馴染みの深い存在だったコンクリートブロック(CB)造りの三角屋根住宅、これを道内の建築学の研究者らが寒冷地に適した住宅様式として再評価する調査を進めている。札幌近郊には北海道住宅供給公社が1950~70年代に建設した約3500戸が原形のまま残っており、住民や当時の技術者から詳しい聞き取りを行い、記録に残す。その上で、長く使ってもらうため、適切な改築方法などを提言する考えだ。

調査を行っているのは、北海道工業大や室蘭工業大などの教員と民間の建築家ら12人。耐寒や防火性に優れた三角屋根住宅の良さを見直そうと昨年、日本建築学会北海道支部に研究会を設けた。

CB造りの三角屋根住宅は、1953年に北海道防寒住宅建設等促進法が施行されて以降、建築の際に低利融資を受けられることから、70年代にかけて普及。戦後の道内の住宅は木造が主で防寒対策は遅れており、住宅近代化の幕を開く役割を担った。道住宅供給公社は札幌や旭川、釧路など各市に建設、住宅メーカーも続いた。

普及したのは、雪が積もらない急勾配の屋根や熱が逃げにくいシンプルな外壁など構造上の利点があったためだ。研究会メンバーの道工大建築学科の谷口尚弘准教授(39)は「居間に和室や台所が隣接して廊下部分が少なく、暖房効率が高かった」と指摘。居間中心の間取りは「家族が自然に集まり、コミュニケーションを取りやすい構造。北海道が誇るべき住宅」と評価する。

研究会は今年6月、道住宅供給公社が札幌、北広島、石狩、江別の4市で建て売りした計7810戸の三角屋根住宅の現状を調査。全面改築で基礎部分から建て替えられた住宅が2673戸(34%)、増改築で三角屋根ではなくなった住宅が1262戸(16%)、三角屋根の原形を残した住宅は3527戸(45%)あり、その他は空き地などになっていた。

80年代以降は木造の高気密高断熱住宅が登場した影響などで新たな建築はほとんどない。研究会メンバーの室工大の真境名(まじきな)達哉講師(43)は「CB造りの住宅の普及例は、道外では戦後に米軍が建設した沖縄県などで、全国的に少ない。官民一体で一つの形式の住宅を強力に普及させた極めて珍しい例」と強調する。

札幌市手稲区で73年から三角屋根住宅に住む那須野美智代さん(68)は「造りがしっかりしていて安心感がある。夏は涼しくて冬も暖かく、北海道にぴったりの住宅だと思う」と愛着を語る。研究会では住人から、改築した理由や方法などの聞き取りも行い、今後、学会などで結果を発表する。谷口准教授は「このまま忘れ去られるのは、あまりに惜しい住宅文化。原形を維持した改築例を示し、少しでも多くの三角屋根住宅が残るお手伝いができれば」と話した。