2012/11/12

三角屋根住宅、再評価へ調査 寒冷地に適したコンクリ造り 札幌近郊に3500戸

三角屋根住宅、再評価へ調査 寒冷地に適したコンクリ造り 札幌近郊に3500戸

かつては道民の暮らしに馴染みの深い存在だったコンクリートブロック(CB)造りの三角屋根住宅、これを道内の建築学の研究者らが寒冷地に適した住宅様式として再評価する調査を進めている。札幌近郊には北海道住宅供給公社が1950~70年代に建設した約3500戸が原形のまま残っており、住民や当時の技術者から詳しい聞き取りを行い、記録に残す。その上で、長く使ってもらうため、適切な改築方法などを提言する考えだ。

調査を行っているのは、北海道工業大や室蘭工業大などの教員と民間の建築家ら12人。耐寒や防火性に優れた三角屋根住宅の良さを見直そうと昨年、日本建築学会北海道支部に研究会を設けた。

CB造りの三角屋根住宅は、1953年に北海道防寒住宅建設等促進法が施行されて以降、建築の際に低利融資を受けられることから、70年代にかけて普及。戦後の道内の住宅は木造が主で防寒対策は遅れており、住宅近代化の幕を開く役割を担った。道住宅供給公社は札幌や旭川、釧路など各市に建設、住宅メーカーも続いた。

普及したのは、雪が積もらない急勾配の屋根や熱が逃げにくいシンプルな外壁など構造上の利点があったためだ。研究会メンバーの道工大建築学科の谷口尚弘准教授(39)は「居間に和室や台所が隣接して廊下部分が少なく、暖房効率が高かった」と指摘。居間中心の間取りは「家族が自然に集まり、コミュニケーションを取りやすい構造。北海道が誇るべき住宅」と評価する。

研究会は今年6月、道住宅供給公社が札幌、北広島、石狩、江別の4市で建て売りした計7810戸の三角屋根住宅の現状を調査。全面改築で基礎部分から建て替えられた住宅が2673戸(34%)、増改築で三角屋根ではなくなった住宅が1262戸(16%)、三角屋根の原形を残した住宅は3527戸(45%)あり、その他は空き地などになっていた。

80年代以降は木造の高気密高断熱住宅が登場した影響などで新たな建築はほとんどない。研究会メンバーの室工大の真境名(まじきな)達哉講師(43)は「CB造りの住宅の普及例は、道外では戦後に米軍が建設した沖縄県などで、全国的に少ない。官民一体で一つの形式の住宅を強力に普及させた極めて珍しい例」と強調する。

札幌市手稲区で73年から三角屋根住宅に住む那須野美智代さん(68)は「造りがしっかりしていて安心感がある。夏は涼しくて冬も暖かく、北海道にぴったりの住宅だと思う」と愛着を語る。研究会では住人から、改築した理由や方法などの聞き取りも行い、今後、学会などで結果を発表する。谷口准教授は「このまま忘れ去られるのは、あまりに惜しい住宅文化。原形を維持した改築例を示し、少しでも多くの三角屋根住宅が残るお手伝いができれば」と話した。