2012/05/28

旧相馬邸屋根裏に函館大火の爪痕…焼け跡見つかる

旧相馬邸屋根裏に函館大火の爪痕…焼け跡見つかる


 旧相馬邸(函館市元町33、東出伸司館長)の屋根裏で、90年前の函館大火の焼け跡が見つかった。一部には炭化状態となった痕跡も見られるなど生々しい爪痕が残っていて、「函館の歴史を今に伝える貴重な財産」と東出館長(72)は感慨を新たにしている。


 同邸は、明治の豪商相馬哲平が1908(明治41)年に建てた私邸。東出館長が2010年6月から一般公開を開始しているが、屋根裏は立ち入り禁止となっている。そんななか今年3月、施設の耐力調査をしていた業者が、1922(大正11)年の函館大火の痕跡を発見した。
 その焼け跡は、一番高い位置で屋根を支える棟木や、棟木を支える木などで、いずれもヒバが中心に使われており、長さ7メートル以上にわたって伸びている。棟木は他と比べて炭化状態だが、屋根板に焼け跡がないことから、大火の後に屋根板を修復したのではないかとみられている。
 さらに、屋根裏からは、防火に適した厚みのある土壁も見うけられ、館長は、当時相馬邸の向かいに旧函館商業高校があり全焼した、その飛び火が燃え移った可能性を指摘し「屋根裏を見ていると、いち早く防火に努めた相馬哲平の意識の高さを見るかのようだ」と感心する。


 現在、屋根裏には10人ほどを収容できる足場を設け、研究者や建築業界関係者、町会団体など、研究や勉強目的での見学ができるようにした。隣の納戸には、当時の周辺の被害を伝える写真パネル19点を展示し、近く屋根裏の写真も数点並べる予定をしている。


 また、館長は「1階の天井を支える『釣り天井』など、豪邸独特の複雑な内部構造も屋根裏から見ることができる」と語り、「棟木などの痕跡は保存も大事だが、老朽化している館全体を考えれば、いずれは修復しなければならない」と話している。